数学が伸びる勉強法

本番で実力を発揮するためのワーキングメモリ対策

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試験本番で実力を発揮できない原因を探る

テストが返ってくる。

点数を見て、お子さんが小さな声でつぶやきます。

「家ではできたのに…」
「頭が真っ白になって、何も思い出せなかった」

保護者の方も、胸が苦しくなりますよね。

  • 実力はあるはずなのに、なぜ?
  • 本番に弱い性格なのだろうか?
  • 次の入試でも、同じことが起きたらどうしよう?

「本番に弱い性格」と決めつける必要は、ありません。

こんにちは。雙葉進学教室の「ビッグロック博士」です。

数学の指導に40年携わり、教育学修士(数学教育)として、
子どもたちの考え方を研究してきました。

大阪・沖縄・愛知の塾や、
東京の大手塾の海外校(ロンドン、ニューヨーク、上海)でも、
日本人児童の受験指導に関わりました。

今日は、本番で頭が真っ白になる仕組みと、
今日からできる3つの対策をお話しします。

プレッシャーがワーキングメモリを圧迫する原因

  • 数学を解くとき、頭の中の作業台(ワーキングメモリ)が働いている
  • 本番のプレッシャーや心配は、その作業台の一部を占領してしまう
  • すると、普段なら難なくできる計算や条件整理に使える余地が減る
  • 対策は、気合いではなく、作業台を守る工夫

ワーキングメモリとは、問題の条件や途中の数を、
一時的に頭に置いておく働きです。

広島大学の則武良英氏と湯澤正通氏のレビュー論文(2018年)でも、


ネガティブな感情は、

テスト中に一時的にワーキングメモリの容量を減らして、
課題の遂行に影響する、

と整理されています。

実力がある子が本番で失敗する理由

ここで、少し意外な研究を紹介します。

心理学者のベイロック(Beilock)らは、
約100名の大学生を対象に、ワーキングメモリの強さを測ったうえで、
複雑で見慣れない数学の問題を解かせました。

そして、一部の学生には、プレッシャーをかけました。

「正解すると報酬がもらえる。
ただし、面識のないパートナーも正解した場合のみ」

と伝え、その後
「パートナーは正解した」
と知らせたのです。

結果は、こうでした。

  • ワーキングメモリの大きい学生は、プレッシャー下で成績が下がった。ワーキングメモリの小さい学生と同じ水準まで
  • ワーキングメモリの小さい学生は、プレッシャーの有無で成績が変わらなかった

2005年の論文(Beilock & Carr)の要旨にも、
同じ内容が書かれています。

最も成功する資質のある人ほど、プレッシャーで害を受けやすい、

という結論です。

なぜでしょうか。ベイロック氏は、
才能ある人のワーキングメモリを、プレッシャーの感覚が食いつぶす
と説明しています。

さらに、プレッシャー下では、能力の高い学生が、
推測や概算のような、精度の低い解き方
に切り替えて、正確さを損なったと解釈されています。

つまり、お子さんが「家ではできるのに」と感じるのは、
実力が低いからではなく、実力があるからこそ起きる現象
かもしれません。

本人が気づかないプレッシャーの影響

もう1つ、気になる報告があります。

則武氏らの研究(2018年)では、プレッシャーがかかると、
主観的な不安を感じていなくても、
ワーキングメモリの課題成績が下がったと報告されています。

「緊張してる?」と聞いて、
「別に」と返ってきても、安心はできません。

本人も気づかないところで、作業台が減っている
ことがあるのです。

また、海外の調査では、
小学生・中学生の25%〜40%がテスト不安を感じている
と報告されています。

ただし、日本については、
レビューが書かれた2018年時点で、
大規模な調査はないと述べられています。

ですから、
「うちの子だけ」ではない、
ということは言えそうです。

ワーキングメモリを守るための3つの対策

では、どうすればいいのか。研究から、3つの方向が見えてきます。

  1. 試験の前に、心配を書き出す(作業台を空ける)
  2. ドキドキを、味方として捉え直す(作業台の消費を減らす)
  3. 頭の中の作業を、紙に移す(作業台の負担を減らす)

順番に、見ていきましょう。

対策①:試験の直前に、心配を書き出す

心理学者のラミレス(Ramirez)とベイロックは、
2011年に科学誌『サイエンス』で、こんな実験を報告しました。

実験1(大学生20人・数学テスト)

  • 短い数学テストを2回受けた。2回目の前に、報酬や録画などで、意図的にストレスをかけた
  • 半数は10分間、テストへの気持ちを書いた。もう半数は、静かに座っていた
  • 結果:静かに座った群は、正答率が12%低下。書いた群は、5%向上した

実験2(高校9年生・生物の期末試験)

  • 学期末の6週間前に、テスト不安を測った
  • 試験の直前に、「テストについての気持ちを書く群」と「テストに出ない話題を考える群」に分けた
  • 結果:テスト不安の高い生徒のうち、書いた生徒の平均評定はB+、書かなかった生徒はB−

書いた群では、不安の高い生徒が、
不安の低い生徒と同程度の成績になりました。

日本でも、似た研究があります。

則武氏らは、プレッシャー下のワーキングメモリ課題で、

7分間の「利益焦点化筆記」(ネガティブな出来事から得た利益を書く)を行ったところ、
成績の低下が和らいだと報告しています。

この方法は、
中学生にも使いやすい
とされています。

ただし、万能ではありません

効果が出なかった研究もあります。

  • テスト不安は下がったが、成績は上がらなかった研究
  • 数学不安の低い人が対象で、効果が見られなかった研究

レビュー論文も、短い筆記が常に有効とは限らず、
年齢や課題の種類などの条件は、
今後の研究が必要だと結んでいます。

ですから、
「書けば必ず点が上がる」
とは言えません。

「試してみる価値のある選択肢」
くらいに考えてください。

家庭での書き方(私の提案)

試験の前日か当日の朝、
ノートに5〜10分で書きます。

  • 「今、いちばん心配なことは?」
  • 「もし失敗したら、何がいやなのか?」
  • 「この試験に向けて、自分がやってきたことは?」

3つ目は、前述の「利益焦点化」に近い考え方です。

うまくいかなかった想像ではなく、積み上げたことに目を向ける

ことがポイントです。

対策②:「ドキドキ」を、味方として捉え直す

2つ目は、緊張の捉え方です。

アメリカの短大で、数学を受講する93名(18〜58歳)を
対象にした研究があります(Jamieson ら)。

2回目の試験の前に、2つの記事のどちらかを読んでもらいました。

  • 再評価群:ストレス反応は、体が対処しようとしている働きで、有益なものだと説明する記事
  • 対照群:ストレスは無視するのが最善だと説明する記事

結果は、こうでした。

  • 再評価群は、数学の評価不安が低下し、2回目の試験の成績が向上した
  • 対照群は、成績の向上が見られなかった

則武氏らのレビューも、再評価を
「テスト場面のネガティブ感情に対処する、適応的で有効な方略」
と整理しています。

ポイントは、こうです。

  • 抑圧(緊張を隠す、押さえ込む):課題の最中に働くので、ワーキングメモリを消費しやすい
  • 再評価(捉え方を変える):課題の前に認知を変えるので、ワーキングメモリへの負荷が小さい

つまり、「緊張してはいけない」と押さえ込むのは、
作業台をさらに使ってしまう
可能性があります。

家庭での言い換え(私の提案)

  • 「緊張するな」 → 「ドキドキするのは、体が本気を出そうとしているサインだよ」
  • 「落ち着いて」 → 「ドキドキしても大丈夫。そのまま1問ずつ進もう」

対策③:頭の中の作業を、紙に移す

3つ目は、一番すぐに使える対策です。

プレッシャーで作業台が減るなら、
そもそも、作業台に載せる量を減らせばいい
のです。

そのための道具が、途中式です。

具体例で見てみましょう。

問題:(x+3)(x−5)−(x−2)(x+4)を計算しなさい。

頭の中だけでやると

「x²−2x−15、から、x²+2x−8を引くから、えーと、符号が…」

展開した式を覚えたまま、引き算の符号を処理します。

作業台がいっぱいのところに、プレッシャーが重なると、
符号のミスや、手順の抜け
が起きやすくなります。

紙に移すと

  1. (x+3)(x−5)=x²−2x−15
  2. (x−2)(x+4)=x²+2x−8
  3. 与式=(x²−2x−15)−(x²+2x−8)
  4. =x²−2x−15−x²−2x+8
  5. =−4x−7

ポイントは2つあります。

  • 展開した式は、かっこをつけて書く(3行目)。引き算の符号を、頭の中で変えない
  • 1行に、1つの操作だけを書く

こうすると、1行ごとに頭の中を空にできます。
本番で大切なのは、
覚えておく量を、最小限にすること
です。

ベイロック氏の研究で、プレッシャー下の学生が、
精度の低い「概算」に切り替えたという解釈を紹介しました。

本番で急いで暗算や概算に逃げたくなったとき、あえて1行書く。

これが、作業台を守る習慣になります。

試験の前日、保護者の方にできる3つの声かけ

最後に、保護者の方にできることをまとめます。

1. 「リラックスして」とは言わない

言われるほど意識して、かえって緊張します。

代わりに、「ドキドキは普通だよ」と受け止めます。

2. 「今、いちばん心配なことは?」と聞いて、聞くだけにする

答えを出さなくて構いません。

聞いてもらうだけで、心配が少し外に出ます。

3. 保護者自身の不安を、そのまま渡さない

ある進学塾の指導者は、
親の不安が子どもに増幅されて伝わる、と述べています。

前日に泣いてしまった受験生が、母親に手を握られ、
信頼を伝えられて落ち着いた、という事例も紹介されています。

「信じているよ」と、一言伝える。

それだけで十分です。

なお、強い不安が長く続いて、日常生活や登校に影響が出ている場合は、
数学の対策だけで解決しようとせず、
学校の先生やスクールカウンセラーなど、専門の方に相談してください。

「本番で実力を出す力」を、一緒に身につけませんか

「家ではできるのに、いつも本番で崩れる」
「うちの子が、どの場面で作業台を使い切っているのか知りたい」
「半田高校・横須賀高校を目指しているが、本番の緊張が心配」

そんなときは、数学の指導経験が豊富な第三者の目が役に立ちます。

雙葉進学教室は、愛知県半田市にある、数学・理科に特化した進学塾です。

40年の指導経験を持つ塾長が、半田高校・横須賀高校を目指す中学生に、解き方だけでなく、
本番でも崩れない、途中式の書き方と考え方の習慣
から指導しています。

「家ではできるのに」を、
「本番でもできた」に。

ぜひ一度、雙葉進学教室にご相談ください。


大岩裕之(おおいわ ひろゆき) 雙葉進学教室 塾長。数学教育学修士・専修免許状取得。ロンドン・ニューヨーク・上海など6都市での指導を経て、2015年より半田市にて開校。指導歴40年・数学・理科専門。

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