数学が伸びる勉強法

教えすぎが逆効果?親が知っておくべき接し方

教えすぎが逆効果になる理由

「これ、わからない」

子どもにそう言われたとき、あなたはどうしていますか。

「じゃあ、やり方を教えるね」

そう言って、すぐに解き方を説明していませんか。

わからない問題があれば、すぐに教えてあげる。

それは、決して間違った愛情ではありません。

むしろ「うちの子のために」という、まっすぐな気持ちの表れです。

でも、もしその「教えてあげたい」という気持ちが、
子どもの思考力を静かに奪っているとしたら、どうでしょうか。

プロでも失敗する親子学習の難しさ

塾講師や家庭教師として、5000人以上の子どもたちに学習指導をしてきた
家庭学習コンサルタントがいます。

教えるコツも、子どもがどこでつまずくかも、
基本的な知識も指導スキルも、十分に持っている人物です。

そのプロが、自分の息子には小さなころから丁寧に教材を選び、解説をし、
わからない問題があればすぐに解き方を教えてきました。

結果はどうなったか。

「これができなかったのね。じゃあ、この問題のやり方を教えるね」

そう声をかけると、息子は下を向き、不機嫌な表情になり、
そっぽを向くようになりました。

解説をしても、聞こうとしなくなったのです。

教えるプロが、教えすぎたことで、
わが子の学習をうまくいかなくさせてしまった。

この事実は、

「教えるのが上手な親は、子どもにとって有利」

という一般的なイメージを覆します。

親子関係が学習に与える影響

なぜ、教えるプロでも、わが子相手にはうまくいかなかったのでしょうか。

理由は、親子という関係そのものにあります。

親子の間には、他人同士にはない
「甘え」
が生まれやすいのです。

子は親に甘えやすく、
親は子に必要以上に厳しくあたりやすい。

塾の先生が生徒に教えるときには起きない感情のもつれが、
親子の間では簡単に起きてしまいます。

「なんでこんな簡単な問題ができないの」

「さっきも同じこと言ったよね」

こうした言葉が、無意識のうちに出てしまう。

子どもの側も、わからない・できないことへの悔しさを、
親に対してだけぶつけやすくなります。

結果として、説明を聞こうとせずに黙り込んだり、
不機嫌になったりする。

そして勉強が先に進まなくなる。この悪循環が、
親子学習ではとても起きやすいのです。

試行錯誤の重要性と学びのプロセス

もう1つ、見落とされがちな理由があります。

「わからない」

と言われた瞬間にすぐ教えてしまうと、子どもが

自分で考え、試行錯誤する時間

を奪ってしまうことになります。

これは精神論ではなく、
実際の実験で示されていることです。

ある実験では、ラットに2つの穴から正解の穴を選ばせる課題を与えました。

すると、すぐに適当に選んで間違えたラットよりも、
選ぶまでにじっくり考えて間違えたラットの方が、
最終的な学習成績がよかったのです。

つまり、すぐに正解にたどり着けなくても、
あれこれ考えを巡らせて、なかなか答えが見つからないという
プロセスそのものが、学びを深めていたということです。

専門的には

「検索の失敗が学習を促進する」

と呼ばれています。

子どもが問題の前で悩んでいる時間、
手が止まっている時間。

それは、サボっているのではなく、
頭の中で情報を検索し続けている、
非常に大切な時間なのです。

そこにすぐ答えを差し出してしまうと、
この検索のプロセスがまるごと消えてしまいます。

何度も同じような問題で手が止まるようになるのは、
実はこの「考える時間」を奪われ続けてきた結果かもしれません。

効果的な教え方のポイント

ここまで読んで、

「じゃあ、何も教えないほうがいいの?」

と思うかもしれません。

そうではありません。

大切なのは、

教えるタイミングと長さ

です。

先ほどのプロは、数えきれないほどの失敗を重ねたのち、
唯一うまくいく条件にたどり着きました。

子どもが「わからない」と言った瞬間に、
すかさず解説を始めるのではなく、まずは

「どこまで自分で考えた?」
「どこで詰まってる?」

と聞いてみる。

それでも本人から「教えて」と言われたら、
そこで初めて、できるだけ短く、要点だけを伝える。

だらだらと長時間説明を続けないことが、何より重要です。

特に、勉強が得意なお母さん・お父さん、
塾でアルバイトをしていた経験のある保護者ほど、
丁寧に教えたくなってしまいます。

だからこそ、このルールを意識的に持っておく必要があります。

親が今日から実践できる3つの行動

最後に、今日から実践できることをまとめます。

「わからない」と言われても、すぐには教えない

まず「どこまで考えた?」と聞いてみてください。

考えている途中であれば、そのまま見守ってください。

教えるのは「求められたとき」だけにする

先回りして教えるのではなく、子どもから
「教えて」
と言われるのを待つ。

これだけで、親子学習の空気が変わります。

教えるときは、できるだけ短く

教える必要があると判断したときも、
要点だけをサッと伝えて終わりにしてください。

長い解説は、かえって子どものやる気を奪います。

わからない問題の前で子どもが悩んでいる時間は、
止まっているように見えても、頭の中では確かに動いています。

今日、子どもが「わからない」と言ったら、
すぐに答えを渡す前に、少しだけ待ってみてください。

その数分間が、数学の思考力を育てる余白になります。


大岩裕之(おおいわ ひろゆき) 雙葉進学教室 塾長。数学教育学修士・専修免許状取得。ロンドン・ニューヨーク・上海など6都市での指導を経て、2015年より半田市にて開校。指導歴40年・数学・理科専門。

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