成績が上がらないのはスマホのせい?
「今日は2時間も机に向かった」
「でも、模試の結果は先月とほとんど変わらない」
そんな経験、ありませんか。
勉強時間は確保できている。ノートも真面目に取っている。
それなのに、数学の点数だけがずっと伸びない。
原因は「才能」でも「やる気」でもないかもしれません。
あなたの隣に置いてある、そのスマホです。
今日は、机の上のスマホが数学の点数にどれほどの影響を与えているのか、
具体的な研究データをもとにお伝えします。読み終える頃には、
今日から何をすればいいのかがはっきり見えるはずです。
スマホが勉強の質を下げる理由
先に結論からお伝えします。
スマホは
「使っていなくても」「電源を切っていても」、
近くに置いてあるだけで数学の成績を下げます。
これは精神論でも、根性論でもありません。
実際の研究データで示されている事実です。
つまり、「今日は2時間頑張った」という時間の"量"よりも、
「スマホがどこにあったか」という環境の"質"のほうが、
結果を大きく左右しているということです。
理由①:スマホ使用時間が勉強効果を逆転させる
まず、もっとも衝撃的なデータからご紹介します。
脳科学者・横田晋務氏の調査によると、
子どもたちの家庭学習の状況を分析した結果、次のようなことがわかりました。
- 算数・数学の勉強時間が2時間以上/スマホ使用が4時間以上の場合の正答率:55%
- 勉強時間が30分未満/スマホ使用が0時間の場合の正答率:60%
つまり、家で2時間以上も数学を頑張っている子が、
ほとんど勉強していない子よりも成績が悪いという結果が出ているのです。
普通に考えれば、
「長く勉強したほうが成績は良いはず」
と思いますよね。
でも実際のデータは、その直感を裏切ります。
理由はシンプルです。
スマホを長時間使う生活習慣そのものが、
勉強の"質"を下げてしまっている
からです。
机に向かっている時間はカウントされていても、
その間に集中力が細切れになっていれば、
実質的な学習効果はほとんど残りません。
理由②:スマホの電源を切るだけでは不十分な理由
「じゃあ、勉強中は電源を切っておけば大丈夫だよね」
そう思った方に、
もう1つ知っておいてほしいデータがあります。
テキサス大学オースティン校のエイドリアン・ワード准教授のチームが、
約800人を対象に行った実験です。
参加者を3つのグループに分けて、集中力が必要な作業をしてもらいました。
- スマホを別の部屋に置いたグループ → 成績が最も高い
- スマホをポケットやカバンにしまったグループ → 中間
- スマホを机の上に置いたグループ → 成績が最も低い
ここまでは、なんとなく予想がつくかもしれません。
驚くべきはここからです。
この実験では、スマホの電源を完全に切っていた場合でも、同じ結果になりました。
電源を切っていようが、画面を伏せていようが、
視界の中や手の届く範囲にスマホが「存在している」だけで、
脳のパフォーマンスは下がってしまうのです。
研究チームは、この影響の大きさを
「睡眠不足の場合とほぼ同程度」
と報告しています。
つまり、多くの人が信じている「
電源を切っておけば集中できる」という対策は、
実はほとんど意味がありません。
大事なのは「電源」ではなく「距離」なのです。
理由③:なぜ数学はスマホの影響を受けやすいのか
「集中力が落ちる」
という話は他の科目にも当てはまりそうですが、
実は数学は特にこの影響を受けやすい科目だと言われています。
理由は、数学という教科の性質にあります。
英単語や社会の年号は、1つひとつの知識が独立しています。
多少気が散っても、覚えていることを思い出せば解けます。
一方、数学の問題を解くときは違います。
- 問題文を読んで条件を整理する
- 使う公式を思い出す
- 途中式を頭の中で保持しながら計算を進める
- 出てきた答えが条件に合っているか確認する
こうした複数の手順を、
頭の中に一時的に置きながら進める必要があります。
この「頭の中の作業スペース」のことを、
心理学では「ワーキングメモリ」と呼びます。
スマホが視界に入っているだけで、
脳はそのスマホに注意を向けまいと無意識に力を使い続けます。
この「気にしないようにする」という作業そのものが、
ワーキングメモリを消費してしまうのです。
その結果、数学を解くために本来使えるはずだった頭の中のスペースが、
こっそり削られてしまいます。
難しい文章題や図形問題で
「あれ、さっき整理した条件、何だったっけ」
と混乱しやすくなるのは、このためです。
スマホと勉強に関するよくある質問
ここまでのデータを読んで、いくつか疑問が浮かんだ方もいるはずです。ここで整理しておきます。
Q. 友だちのスマホでも影響があるの?
A. あります。
ある実験では、横に置いてあるのが自分のスマホでなく、
他人のスマホであっても、同じように作業効率が低下することが確認されています。
「友達と一緒に勉強すれば頑張れる」
というのはよくある話ですが、
その机の上に誰かのスマホが置かれている場合、
思っている以上に集中力が削られている可能性があります。
Q. 普段からスマホをよく使う子とあまり使わない子で、影響は違うの?
A. 違います。
特に普段あまりスマホを使わない人のほうが影響を受けやすいという報告があります。
「自分はそこまでスマホ依存してないから大丈夫」
と思っている人ほど、実は油断しやすいということです。
Q. 具体的に、どこに置けばいいの?
A. 優先順位は次の通りです。
- 別の部屋に置く(最も効果が高い)
- カバンやポケットにしまう(次善策)
- 机の上に置く(最も悪い。電源off・画面伏せでも同様)
「同じ部屋にあるけど電源は切ってある」
は、対策としては不十分だと覚えておいてください。
スマホを遠ざけて勉強効果を高める方法
ここまでのデータをまとめると、伝えたいことはシンプルです。
- 勉強時間の長さより、スマホがどこにあるかのほうが結果を左右する
- 電源を切るだけでは対策として不十分
- 数学は特にこの影響を受けやすい科目
では、今日から何をすればいいのか。
難しいことは何もありません。
数学の勉強を始める前に、スマホを今いる部屋から出してください。
リビングで勉強するなら、スマホは自分の部屋に置く。
自分の部屋で勉強するなら、リビングに置いてくる。それだけです。
「机の上に伏せて置く」でも「電源を切る」でもなく、
物理的に見えない場所に移動させること。
これが、今日紹介したすべてのデータから導かれる、
もっともシンプルで効果的な一手です。
次に数学の問題集を開くとき、
まずはスマホをどこに置くかを決めてみてください。
同じ1時間でも、その結果は大きく変わってきます。
大岩裕之(おおいわ ひろゆき) 雙葉進学教室 塾長。数学教育学修士・専修免許状取得。ロンドン・ニューヨーク・上海など6都市での指導を経て、2015年より半田市にて開校。指導歴40年・数学・理科専門。